大阪府、金融ハブ「国際金融都市構想」実現に向けて取り組み本格化へ
21日、日本に世界の金融ハブをつくる「国際金融都市構想」の候補である大阪府で、実現に向けた取り組みの本格化を日本経済新聞が報じた。
吉村洋文知事は18日、官民共同の推進組織を年度内に設立すると発表しデリバティブ(金融派生商品)や先端技術を特徴に打ち出す考えだ。ただ、現状で世界の金融都市との”実力差”は大きく実現性は不透明だが、温度差がある財界と行政が足並みをそろえられるかが課題だ。
大阪国際金融都市化の鍵はデジタル証券など「デリバディブ(金融派生商品)」
同構想を巡っては今年9月に第99代内閣総理大臣に就任した菅義偉首相が東京、大阪、福岡の3都市を競わせる意向を示している。
福岡ではすでに誘致を目指す産官学の組織が立ち上がり、東京には国内の金融機能がほぼ集中する。こうした中で大阪がどう独自性を発揮するかが課題となっており、吉村知事が挙げたのがデリバティブだ。
日本取引所グループ(JPX)は今年7月に金融先物を扱っていた大阪取引所に、金や白金といった貴金属などの商品先物も移管させ総合取引所の運用を始めた背景がある。
江戸時代に世界初の近代的な先物取引所「堂島米市場」ができた大阪は、デリバティブの世界で国際的な知名度も高い。
もう一つが先端技術を活用した金融。有力視されるのがブロックチェーン(分散型台帳)上で管理するデジタル証券だ。不動産などを裏付けに従来の有価証券より小口の発行や即時決済が可能になるため、企業の資金調達や個人の投資活動のハードルが低くなるとして注目を集める。
SBIホールディングス、大阪・神戸地区にデジタル証券取引所設立へ
今年9月に自主規制機関「日本STO協会」の会長も務めるSBIホールディングスの北尾吉孝社長は、デジタル証券の取引所を大阪・神戸地区に置く構想を明らかにし、「日本の都市が国際金融センターの地位を獲得する最後のチャンス」と強調していた。
吉村知事も18日、「北尾社長に呼びかけようと思う」と発言。デリバティブや先端技術など「エッジをきかせて、アジア圏での価値を発揮したい」と語った。推進組織は主要経済団体や取引所、民間金融機関などの参画が見込まれる。役割分担や目指すべきビジョンを練り、2021年4月から国内外に向けた誘致活動や金融人材の育成、新たな市場創造の検討などを始める予定だ。
ただ、財界側の反応は冷静だ。関西経済連合会の園潔副会長(三菱UFJ銀行会長)は16日の記者会見で国際金融都市の条件に生活環境を含めた魅力の高さを挙げ「(現状の)大阪が手を挙げてなれるかというとちょっと距離がある」と発言。
松本正義会長(住友電気工業会長)も、世界の金融都市は人材の集積や税制面の対応が進んでいると指摘し「大阪もきちんとやらないとお客さんが来ず潰れてしまう。実行段階で厳密に環境判断をすべきだ」と語った。
ビジネス環境や金融分野の発展レベルなど5要素によるランキングで、競合相手になり得る東京、香港、シンガポールが4~6位なのに対し、大阪は39位。法人・所得・相続の各税での軽減措置が誘致のカギを握る点も含め課題は多い。官民組織でどこまでビジョンや理念を共有できるか、スタート段階から難しい調整を迫られそうだ。