「感光材」で世界トップシェアの東洋合成工業、未知の先端技術に向かって着実に前進

「感光材」で世界トップシェアの東洋合成工業、未知の先端技術に向かって着実に前進

「感光材」で世界トップシェアの東洋合成工業、未知の先端技術に向かって着実に前進

21日、半導体の回路形成に欠かせない「感光材」で世界シェア首位の東洋合成工業の株価急上昇を、日本経済新聞が報じた

2019年初めに800円台だった株価は20年に1万円を超え高値圏で推移し、株価が10倍以上となる「テンバガー」銘柄として投資家が熱視線を送るのは、最先端の半導体の微細化技術「EUV(極端紫外線)」に対応した感光材だ。

出典:東洋合成工業株式会社

米アップル「iPhone12」にも採用「EUV」向け感光材、世界シェア5割突破

売上高約250億円の中堅企業が圧倒的な競争力を持つ裏には品質への徹底したこだわりがある。

感光材は特定の波長の光に化学反応を起こす材料。JSRや東京応化工業など大手レジストメーカーが溶剤に少量の感光材や樹脂を混ぜて「フォトレジスト」にする。

これを半導体基板に薄く塗り、特定部分に光を当てると設計図通りの回路を描ける。高速通信規格「5G」の実用化や自動運転車の普及に向けて半導体はさらなる高機能化を求められる

鍵を握るのはEUV技術を用いた回路の微細化だ。この技術は米アップルの新型スマートフォン「iPhone12」にも採用された。最先端の回路の線幅は5ナノ(ナノは10億分の1)メートル。新型コロナウイルスよりも細い線で、髪の毛の1万分の1しかない。

少しでも不純物が混じれば回路が潰れて半導体が不良品になってしまう。感光材もEUVの光に反応するものが求められる。EUV向け感光材で東洋合成の世界シェアは5割を超える。数ある感光材メーカーのなかでも、限られたプレーヤーしかEUV向けの感光材を実用化できていない。

EUV向けの感光材は狭い配線の範囲内で狙った化学反応を起こすため、感光材のなかでも構造が複雑だ。化学反応が連鎖的に広がりすぎないように抑制するなど、様々な機能を持つ物質を付加して作る。さらに、機能を加える全ての段階で品質を高く保つ必要がある。東洋合成の木村有仁社長は「日本酒に例えると、米を研ぎ、熟成し大吟醸にする各段階で混じり気のないきれいなものを作るイメージ」と話す。

金と同等価値の「感光材」、東洋合成が持つ簡単にまねできない「強み」

「金と同じくらいの価値がある」(林工場長)という先端品向けの感光材は品質管理も特に厳格だ。

新製品を出す際には販売の前に試作を繰り返し、毎回同じ製品ができるか確認する。この回数も先端品の方が多く、5回ほど繰り返すこともある。半導体の技術は日進月歩。新工場はより狭い線幅向けの感光材の製造も見込み、さらに生産設備を増やせる前提の設計にしている。

半導体産業の成長とともに感光材の構造は複雑化し、より手間のかかる製品になった。製品によっては製造に半年かかる。同社はEUV向け以外の感光材も幅広く手掛ける。少量多品種生産で現在約500種類の感光材を取り扱い、年間100キログラムしか販売しないものもある。木村社長は「普通の人がやろうとすると大変すぎる」と話す。

高い品質と少量多品種を両立させるものづくりの強さが競争力を支える。感光材で業界トップを走り続け、23年3月期に売上高を300億円にする目標を中期経営計画で掲げた。木村社長にはさらなる成長に手応えもある。「今の事業内容で売上高は現在の約2倍の500億円規模を目指せる」と考えている。規模拡大を狙うのは未来の新技術への投資のためだ。「目を付けているのはミクロ領域の制御技術」(木村社長)という。

電池や医療など多くの分野で分子レベルの制御から新素材を生み出すようになったからだ。「将来的には売上高を1000億円規模にして、感光材に限定しないミクロ領域の研究に十分に投資したい」という。常に未来を見据えて投資してきた東洋合成は未知の先端技術に向かって着実に前進していく。