最もポピュラーなテクニカル分析「移動平均線」とは?特徴や注意点など基本解説

最もポピュラーなテクニカル分析「移動平均線」とは?特徴や注意点など基本解説

最もポピュラーなテクニカル分析「移動平均線」とは?特徴や注意点など基本解説

すでに仮想通貨や株のトレードをされている人は、テクニカル分析において「移動平均線(いどうへいきんせん)」を利用している方は多いのではないでしょうか。テクニカル分析の手法は長い相場の歴史の中で、様々な視点や見方が編み出され、テクニカル指標と呼ばれるものは数百とあります。移動平均線はその1つです。

今回はこれから仮想通貨のトレードを始めたいなど初心者の方に向けて、移動平均線の基本的な部分をわかりやすく解説していきます。

移動平均線とは、一定期間の平均価格を線で繋いだもので、価格トレンドの方向や強さを見るためのテクニカル指標です。株価や外国為替、仮想通貨のチャートにおいても、テクニカル分析の中で最もポピュラーで基本的かつメジャーな分析手法です。

移動平均線には単純移動平均線(SME)、加重移動平均線(WMA)、指数平滑移動平均線(EME)など大きく分けて3種類がありますが、今回は基本となる「単純移動平均」を例に説明します。

単純移動平均線(SMA)とは?

単純移動平均線(SMA)は、計算の対象となる期間の複数の終値の平均値を算出し、期間をずらしながら線で繋いで表示したものです。

その線は2本もしくは3本(短期、中期、長期)の線が絡むように配置されています。

よく使われる移動平均線は、日足(5日、10日、25日、30日、75日、80日、150日、160日、200日)、週足(13週、26週、50週)、月足(12ヵ月、24ヵ月、60ヵ月、120ヵ月)などがあります。

たとえば5日移動平均(5SMA)であれば、過去5日間の終値を合計し、日数の5で割って平均した数値を1日ごとに計算して線でつなぎます。以下のような計算式になります。

まずは最初の1日目~5日目の終値の平均値を出します。

  • 1日目終値・・・105円
  • 2日目終値・・・107円
  • 3日目終値・・・108円
  • 4日目終値・・・110円
  • 5日目終値・・・105円
  • 6日目終値・・・102円

計算式は「105+107+108+110+105÷5=107」となり、チャート上の5日目の位置の107円の場所に点が置かれます。次に1日ずらした5日間(2日目から6日目)の終値の平均値を出します。

  • 2日目終値・・・107円
  • 3日目終値・・・108円
  • 4日目終値・・・110円
  • 5日目終値・・・105円
  • 6日目終値・・・102円

計算式は「107+108+110+105+102÷5=106.4」となり、チャート上の6日目の106.4円の場所に点が置かれます。これでチャートの上には平均値が2点置いてある形になっていますが、これらをつなぐと線ができ、これが移動平均線となります。

ちなみにこの線は、107円の次に106.4円となっているため、下降傾向にある線と判断できます。

あとは、7日目、8日目とつなげていくとより長い移動平均線が出来上がっていきます。ほかの日足や週足、月足なども同じように期間をとり計算されていきます。

一般的に週足は短期投資というより中長期目線の投資の利用にみており、月足では短期投資ではほとんど使わないでしょう。

また、移動平均線は、計算対象期間が長期になるほど変動がゆるやかになり、価格の変動に対して反応がにぶくなる特徴があります。

移動平均線の使い方

移動平均線を使った分析手法は、米国の著名チャーチストのJ.E.グランビル氏が移動平均線と値動きの位置関係に注目した「グランビルの法則」が有名ですが、まずは、オーソドックスに売買の判定ができる「ゴールデン・クロス」と「デッド・クロス」から説明していきます。

この分析手法では、対象期間が異なる2本の移動平均線を利用して相場の反転を見ます。

ゴールデン・クロス~買いシグナル

短期の移動平均線が、長期の移動平均線を下から上へ突き抜けてクロスすることを「ゴールデン・クロス」と言います。

直近の価格傾向が上向きに転じたとみられるため買いサインといわれています。

デッド・クロス~売りシグナル

ゴールデン・クロスの逆で、短期の移動平均線が、長期の移動平均線を上から下へ突き抜けてクロスすることを「デッド・クロス」と呼びます。

直近の価格傾向が下向きに転じたとみられる売りサインといわれています。

移動平均線の注意点

移動平均線は、非常にシンプルに相場状況を判断できるものとして、現在も広く利用されているテクニカル指標ですが、2つの注意点を説明します。

移動平均線のタイムラグ

1つ目の注意点は価格の変動に対して移動平均線の反応が遅れ、シグナルの発出に必ず「タイムラグ」が発生することです。

移動平均線は、その計算方法から過去の終値の影響を直接受け、常に値動きを後追いして変動するため、相場に先行することがない指標です。

このことから、移動平均線だけで相場の行方を予測することは難しく、値動きの結果、相場状況がどうなっているかを確認する指標であるとことを理解しなければなりません。

そこで、タイムラグを克服するために「加重移動平均線(WMA)」や「指数平滑移動平均線(EMA)」などの発展型が存在します。これらは別の記事にて改めて解説します。

移動平均線の「だまし」

上記で説明した「ゴールデン・クロス」と「デッド・クロス」を含め、移動平均線のサインが表れても必ずしも売買タイミングとなるわけではありません。

それには、「だまし」と呼ばれるものがあり、必ずしもこれらのクロスのサインが正しいとは限らないのです。その理由には、これら2つのサインは非常に予想がしやすいため、相場の裏をかき利益を獲得しようという相場の流れがあるからです。

一方で長期の移動平均線では、だましは少なくなりますが、タイムラグが生じ、トレンド転換のシグナルが現れるのが遅くなります。銘柄ごとに相性の良い時間軸を探してみるとよいでしょう。

「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」だけで売買の判断するのではなく、他のテクニカル指標と合わせてみたり、タイミングをずらして様子を見ながら冷静に取引をすることが求められます。

移動平均線がテクニカル分析の基本とされる理由の1つに、他の数多くのテクニカル指標に移動平均線の考え方が応用されており、MACDやボリンジャーバンドなど、他のテクニカルチャートにも応用して利用されています。

また、移動平均線の期間設定は自由に設定でき、古今東西の投資家の中には「7、14、42といった7の倍数」を推奨したJ・ウェルズ・ワイルダー氏、「9、17、26の三つの数字(一目均衡表)の自然摂理に適合した日柄を重要視した一目山人(細田吾一)氏。

そして、黄金比の考え方のもとになったフィボナッチ数列の登場する「5、8、13、21、34といった数字」から相場の上げ下げを分析したエリオット波動など、さまざまな著名投資家がさまざまな「数字」に着目しています。

このように基本的なものと応用的なものありますが、一通りおさえておくことで実戦でも役立つ場面が増えていきます。

移動平均線の基本使い方まとめ

  • 短期・中期・長期でどのようなトレンド方向があるのかを把握(上昇か下落か、もしくは横ばいか)
  • 「ゴールデン・クロス」「デッド・クロス」の発生を見極め、価格の流れが変化したかを把握。
  • 現在の価格と移動平均線の位置関係を確認し、買い相場なのか売り相場なのかの強さを把握。

そして、最後にテクニカル分析というのは人によって相性があります。きちんと利益を出し続けるトレーダーは、自身の性格と自身で編み出したテクニカル分析の手法が合致しています。

テクニカル分析の「本質的な理由や意味」をしっかり理解していくことで実際に投資の経験値を積んだ際、利益につながる自分のオリジナル移動平均線の使用法が見つかっていくでしょう。