仮想通貨は本来、投機目的だけでなく、送金や決済などにも役立つものとして誕生しました。しかし昨今、仮想通貨市場ではボラティリティ(価格変動)が大きい事から、資産保有や送金、決済など実用性として扱いにくくなっているのが問題視されています。
誰もが来月価格が2倍になりそうな通貨を決済したいと思いませんし、来月には価格が半分の価値になってしまう通貨を預金したいと思わないでしょう。
そこで、その問題を軽減すべく利便性の高い通貨として誕生したのが、国や政府が発行する米ドルなどの法定通貨と連動する「ペグ通貨」や「ステーブルコイン」と呼ばれるものです。
そもそも、ペグ通貨とは
ペグ通貨とは、もともと金融経済用語でもあり、固定相場制の事を指します。
簡単に説明すると、「米ドルなどの通貨と為替レートを固定しておく」ことです。
つまり、自国の通貨が不安定となりやすい経済基盤の弱い国や開発途上国が、為替レートを変動制にすると、ちょっとした事件でその国の通貨のレートが急激変動し、経済に大きな影響を及ぼしてしまいます。
そのため、為替レートを米ドルなどの安定した通貨と固定することにより、為替変動によるリスクを避けることができ、自国の通貨の信頼性を高める事にもなります。
法定通貨の中でペグ通貨として有名なところでは、「香港ドル」や「人民元」などがあります。
では、ステーブルコインとは
ステーブルコイン(stable coin)は日本語で安定したコインを意味します。
そして、仮想通貨では「ペグ通貨」をステーブルコインと呼びます。
ステーブルコインの2つの大きな特徴
1.価格の安定性
ステーブルコインの最大の特徴は、価格の安定性となります。
米ドルなどの法定通貨とペグする事により、ボラティリティが低くなり、日常での決済や預金にも安心して利用でき実用性のある仮想通貨と言えます。
この仮想通貨が普及する事で、仮想通貨経済圏を拡大していく事も可能となり、ステーブルコインを上場させ利用する仮想通貨取引所には、ステーブルコインに預金しておこうとするユーザーが多数、集まるメリットもあります。
2.法定通貨の退避先として
ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を保有している人達は、その仮想通貨が暴落する兆候がみえた時には、一時的にでも法定通貨に戻したいと思います。
それには、「海外取引所→国内取引所→自身の銀行口座」といった流れになり、2回取引所を経由する事になります。それにより、手間と手数料が無駄に発生してしまいます。
しかし、価格の安定性のあるステーブルコインであれば、仮想通貨間でのやり取りの為、手間や手数料をはぶく事ができます。
それは一時的な退避先としての役割や箸休め的な役割とも言え、そのたびにもステーブルコインの需要が見込まれる要因とも言えるでしょう。
ステーブルコインの種類は3つある
1.法定通貨担保型
法定通貨担保型は、「ドルペグ」や「円ペグ」などの、米ドルや日本円といった法定通貨の価格と連動しています。
法定通貨担保型は、国や政府などの価値を保証する中央集権機関の信頼が重要となっています。
法定通貨担保型のステーブルコインはいくかありますが、最も有名なのが、Tether/USDTとなります。
2.仮想通貨担保型
仮想通貨担保型は、その名の通り他の仮想通貨と連動する事で価格が安定している通貨です。
価格の安定性が求められるステーブルコインの担保が、価格変動が大きい仮想通貨を担保にすのは矛盾していますが、価格変動に対応する為に余剰に預金したり、スマートコントラクト機能を利用して、自動取引が可能となり、中央集権を介することなく、透明性高い運用が可能となっています。
仮想通貨担保型のステーブルコインで知名度が高いものでは、Maker/MKRなどがあります。
3.無担保型
無担保型とは、スマートコントラクト機能が中央銀行的な役割を担い、需給を調整する事で価格を安定化させています。
つまり、流通している供給量の一部を超過利潤で購入し、供給量を減らす事で価格を上げる事も可能で、逆に供給量を増やす事で価格の上昇率を抑える事も可能となります。
従来の法定通貨の紙幣量の増減調整方法に似ていて、「法定通貨担保型」や「仮想通貨担保型」よりも実用性が高いとも言われています。
無担保型のステーブルコインには、Basis(べーシス)やSaga(サーガ)などいったコインが注目されています。
「ペグ通貨」や「ステーブルコイン」のまとめ・将来性
ペグ通貨は金融業界の共通用語であり、FX、株式、仮想通貨など、安定した資産に裏付けられている通貨の事を大きなくくりで「ペグ通貨」と呼んでいます。
また、仮想通貨の中で、ペグされている通貨の事を「ステーブルコイン」と呼んでいます。
ステーブルコインは、他の仮想通貨のボラティリティの問題をカバーするべく誕生しました。大企業からのサポートがあり多くの資金調達を成功しているステーブルコインがいくつもあります。
このことから、ステーブルコインへの期待値が非常に高い事がわかります。今後、投機目的や退避先などの利用だけではなく、価格の安定性からインターネット決済で使用できる切り札としての可能性も十分予想されます。
この先も仮想通貨市場で、色々なステーブルコインの需要と普及が高まっていくのか、今後も注目をしていきたいです。