米ニューヨーク州司法当局、仮想通貨発行テザー社に罰金20億円
23日、米ニューヨーク州司法当局は、暗号資産(仮想通貨)を発行する香港企業テザーと関連会社の交換会社ビットフィネックス(本社・香港)に対し、顧客への説明が虚偽だったとして1850万ドル(約19億5千万円)の罰金を科すことが、日本経済新聞の取材で明らかになった。
香港企業テザー社、投資家保護問題浮き彫りに
テザー社は仮想通貨発行の裏付けとなる米ドルを十分に保有しておらず、仮想通貨運用を巡る投資家保護の問題が改めて浮き彫りになった。NY州司法当局は2019年4月にテザー社とビットフィネックスを提訴し、係争が続いていた。
このほどテザー社側が罰金の支払いに応じたことで、和解が成立した。NY州はテザーとビットフィネックスに同州に住む顧客との取引を禁じるほか、運営の透明性を検証するために今後2年間、四半期に1度のペースで準備金や取引について報告するよう義務付けた。
テザー社は米ドルを裏付けとする仮想通貨(ステーブルコイン)の1つである「テザー」を発行している。1ドルをテザー社に渡すと、テザーの単位である1USDTが発行される。1USDTは1ドルと交換できるため、ドルと価格が連動している。
裏付け資産のないビットコインなど他の仮想通貨と異なり、値動きが小さく、交換所間の資金移動などで利用しやすい。調査会社コインマーケットキャップによると、テザーの時価総額は340億ドルで3番目に大きい。
NY州レティシア・ジェームズ司法長官「テザー社の主張は虚偽」
争点の1つはテザー社が「準備金」として保有する米ドルの総額だった。テザーはステーブルコイン発行量と同等額の米ドルを保有していると説明してきたが、一部の専門家の間で疑問の声が上がっていた。NY州司法当局はテザー社の持つドルが、ビットフィネックスの損失補塡に使われており、準備金が不十分だったと指摘。
NY州のレティシア・ジェームズ司法長官は23日の声明で「常にドルで裏付けられているというテザー社の主張は虚偽だった」と批判した。テザー社とビットフィネックスも今回の和解について声明を発表した。
「不正行為はしていない」と述べたうえで、司法当局との争いを早期に解決して事業に集中するため、罰金を支払うと説明した。テザー社を巡っては、ビットコインの価格をつり上げていたとの見方も出ていたが、「2年半に渡った調査の結果、裏付けのないテザーの発行や仮想通貨価格の操縦の証拠は見つからなかった」と主張した。