「サステナブルフード」、サプライチェーン全体の透明性のためブロックチェーンが必要不可欠に
世界の人口は増加の一途をたどって2050年には97億人になると予想されており、人口の増加に比例して食糧問題は常につきまとっている。
食糧の供給量を維持するためには今まで以上に耕地や家畜が必要となっていが、耕地の拡大による環境破壊や、家畜の大量飼育による土地や水を大量使用は環境に多大な影響を与えることが考えられ、現在地球全体で環境負荷を減らしながら生産する「サステナブル(持続可能な)フード」の開発が求められています。
また一方では、食糧の安全性についても問題視されており、食品について原材料の生産から加工、流通に至るサプライチェーン全体で環境や人権に配慮していることを証明するため、情報を改ざんすることが出来ないブロックチェーン技術を生かし、来歴の透明化(トレーサビリティ)に取り組む活動も活発化してきている。
需要が膨らむ「サステナブルフード」
サステナブルフードの市場は、ここ数年で急拡大しており、国際有機農業運動連盟(IFOAM)によると、世界の有機食品の売り上げは02年の230億ドル(約2兆5300億円)から、16年には897億ドル(約9兆8000億円)とわずか14年の間に約4倍に増加しており、このままのペースを維持すれば、確実に食糧不安が発生すると考えられている。
そこで、食糧不安の問題の解決策の一つとして、環境負荷を抑えて生産した有機食品や、環境や人権への配慮を証明した認証食品、そして肉を植物に置き換えた「代替肉」「大豆ミート」などが開発されている。
日本の企業もこの「代替肉」「大豆ミート」の開発に参加しており、喫茶店チェーンのコメダ珈琲店は7月、東京・銀座の歌舞伎座近くに「植物食」をうたい米や大豆など植物だけを食材に使う「KOMEDA is □(コメダイズ(米・大豆))」という名称のカフェをオープンした。
コメダ珈琲店が新店で出す「べっぴんバーガー」は肉のような味や食感を大豆で再現した大豆ミートが使用されており、途上国の生産者に配慮して公正な価格で取引したフェアトレードのコーヒーなどが並んでいます。
コメダの臼井興胤社長は
「これまで安心安全や健康志向のメニュー作りに取り組んできたが、次に来る波が地球環境への配慮だと考えて、出店に踏み切った」
と語っています。
矢野経済研究所の市場予測によると、20年の世界の代替肉(植物由来肉・培養肉)の市場は2572億6300万円。30年に1兆8723億円にまで拡大する見通しとのことです。
「サステナブルフード」の透明性を確保するトレーサビリティ
食糧品の安全性を確保する試みとして、生産者が特定できて食糧品がどのようなルートで一般消費者の手元まで届いたかなどの来歴を知ることが出来るトレーサビリティシステムの利用も拡大してきている。
米IBMはブロックチェーンで食の信頼を担保するプラットフォーム「IBMフードトラスト」を18年に立ち上げ、8月現在、米ウォルマートやネスレなど食品企業や小売り300社近くが参加している。
ウォルマートは葉物野菜のサプライヤーに、取引条件として、このブロックチェーンへのデータ入力を要請しており、ネスレのコーヒー飲料は米IBMのブロックチェーン技術で管理した生産履歴を伝えて、コーヒー飲料の来歴を開示する取り組みなどを始めている。
日本でもブロックチェーン技術導入が始まり、日本IBMは、東京湾で環境に配慮したスズキ漁を営む海光物産(千葉県船橋市)と共同で、海産物の来歴を証明する「Ocean to Table(海から食卓へ)」プロジェクトが開始されている。
漁獲した魚を飲食店に販売し、飲食店の魚料理のメニューに付けたQRコードで漁獲から加工、出荷の情報を追跡できる仕組みを作り、消費者に対して透明性を備えた情報を提供することが出来る。
安全性・透明性を備えた食糧品のトレーサビリティはサステナブルフードに新たな付加価値をつけ、その根幹となるブロックチェーン技術の発展が信頼性を高める役割を担っている。