MastercardがブロックチェーンデジタルIDアライアンス「ID2020」に参加
21日、世界大手決済会社のMastercard(以下マスターカード)は、法的身分証を提供する国連支援プロジェクト「ID2020」ソリューションに取り組むためにID2020アライアンスに参加したことを発表しました 。
ID2020は、アクセンチュア、マイクロソフト、ガビ、ロックフェラー財団、IDEOによって設立。パートナーには、NGO(非政府組織)、民間企業、国連機関などが参加し、デジタルIDのシステムに大規模な生体認証やブロックチェーン技術などの検討・開発を行い、開発した技術の導入を政府や既存機関と協力して進めています。
世界のアイデンティティの現実
日本人の多くは、戸籍、住民登録、日本におけるIDが発行され、これをもとに国際的に認められるIDとしてパスポートも取得できます。これは日本人にとっては当たり前のことでIDに関して不自由することなく生活している人が大半です。
しかし、公的な個人認証手段を持たないために、社会生活に参加できていない人々は、世界で11憶人もいると推定されています。教育、医療、選挙、銀行、モバイルコミュニケーション、住宅、福利厚生や介護保障などにおいて、サービスを受けれないため深刻な人権上の問題とされています。
2015年9月に国連は持続可能な開発目標の中で「2030年までにすべての人に出生証明を含む法的なアイデンティティー(ID)を提供する」という目標を定めています。
ID2020はこの目標を達成するべく国連機関、政府、企業、NGOが連携してIDを持たない人たちにデジタルIDを提供すると共に、分散型のIDネットワークのフレームワークの標準を作り、効率的に開発人道支援を提供できるようにすることを目指しています。
そこでブロックチェーン技術により信頼のおける複数の組織によって管理され、これまでIDを発行してきた政府などといった中央集権的な権威が不要になります。また、誰がどのデータにいつまでアクセスできるのかIDの保有者が選択できるといいます。
コロナウイルスにより「デジタルID」の重要性が高まる
新型コロナウイルスの影響により世界中で最近の社会的距離(ソーシャルディスタンス)の実装に伴い、デジタルへの依存度はさらに高まっています。
例えば、ソーシャルメディア、エンターテインメントストリーミング、オンライン診療、オンライン学習など、さまざまなデジタルサービスにサインアップしてログインしています。
これらの各相互作用で重要なのは、信頼を可能にする上でIDが果たす役割と、どこにいても安全かつ便利に誰であるかを証明する必要性です。これにより、今後さらにデジタルIDの重要性が高まることが予想されます。
ID2020のエグゼクティブディレクターであるダコタグリューナー氏マスターカードのパートナーとしての参加について以下のように述べました。
「デジタルアイデンティティは、すべての人々の社会的および経済的機会を強化するための強力な力の乗数になる可能性があります。
しかし、その可能性を十分に理解するには、政府、テクノロジー企業、金融機関、市民社会が協力する必要があります。MastercardをID2020アライアンスに歓迎し、プライバシー保護とユーザー中心のデジタルIDへの取り組みを称賛できることを嬉しく思います。」
一方、マスターカードのサイバー&インテリジェンスプレジデントであるAjay Bhalla氏は次のように述べています。
「私たちは、世界中で一貫性と共通の基準を確立してこれを実現できるように協力し、毎日人々が直面する真の課題に取り組み、継続的なイノベーションを推進する必要があります。」
デジタルアイデンティティ(ID)が普及し活用されることで、これまでIDを持たない人たちは国からのの給付金や金融へのアクセス、教育サービスなどの認証を伴うさまざまなサービスにアクセスすることが可能となる。
適切に設計されたデジタルアイデンティティ(ID)のシステムは、人々や社会をエンパワーメントするだけでなく、さまざまな経済的価値や利益をもたらすことが期待されます。